スーパーホストHumaさんから「限られた予算でデザインするため」のアドバイス
サウスロンドンのストックウェル地区に佇むビクトリア調の一軒家。全体を覆うライトグリーンに、ラズベリーピンクのドアが印象的です。 真ん中にある真鍮のドアノブを押して、使い古された階段を上がるとそこには、幅広のフローリング、濃いターコイズの壁を背景にヴィンテージのベッドが配され、こぼれるような陽の光が降り注いでいます。 ここがスーパーホストHumaさんのリスティング。レトロな4ベッドルームの空間に、モダンなアメニティを豊富に採り入れた家です。
「ゴージャスな美のシンフォニー」と最大限の賛辞を贈るのはウィーンのMimiさん。ほかにもHumaさんのもとにはインテリアコーディネートのすばらしさを讃えるコメントが多数寄せられています。 「あらゆるディテールに考え抜かれたこだわりが感じられ、あらゆる家具にストーリーがある」
Humaさんのインテリアへのこだわりを見ていると、正式なトレーニングを一度も受けたことのない方には到底思えません。ホームデザインが好きな思いと、それをホスティングで極めたいという意欲だけで人はここまでこれるのかと改めて驚かされます。
スーパーホストが本棚を塗る手を止めて、ホスティングをはじめたきっかけ、古い家を低予算で改装するコツ、雑誌編集者としての本業とホスティングのバランスの取り方について教えてくれました。
何から何まで、よい感じにコーディネートされているお宅ですよね。 やはり雑誌編集の経験が活きているんでしょうか?
「確かに独立系のファッション誌の特集担当エディターですけど、 でも今の仕事をはじめる随分前から、インテリアには興味を持っていました。 家を買いもしないうちから家に置く家具を買っていたほどで。カトラリーみたいなモノに愛着を感じるタイプで、インテリア雑誌はむさぼり読んでいますね。 それもこれもみな元々は、初めての家のコーディネートのためでした」
Airbnbのホスティングで副収入を得ようと考えたきっかけは?
「まあ、参加したのは2012年で、ちょうどオリンピック開催中ということもあって、この界隈でもいくらの収入になるかという話題でもちきりでした。 大きな収入を得ようとはまったく考えてなくて、ほんの小遣い程度でも入ってくればいいなと思っていました。 入居者がいなくて、アパートを売りに出しているところだったので、その穴埋めのつもりだったんです。 自宅でホスティングするようになったのは2016年に入ってからです。 それまで住んでいた同居人がいなくなったので、Airbnbで部屋を1つだけ貸して試してみることにしたんです。 一時的なものだと思っていましたが、1つずつ部屋が埋まるようになっていきました。 去年の夏に最後の同居人が退出してからは、3部屋すべてをAirbnbに掲載中です。 計画したわけでもなく、自然のなりゆきに任せていたら、一色になってしまった感じですね」
家のリノベーションのお話をお聞かせください。 かなり苦労したようですね。
「家はもう、フルリノベーションでした。 注ぎ込んだお金のことはあまり考えたくないですけど、一番出費が嵩んだのは大工さん、配管工事の人、左官さんなどです。自分でできない作業を人に頼むと、どうしても人件費が高くつきますよね。 インテリアは、そんなにみなさんが思うほどお金をかけていません。 なんせバーゲンハンターなので。 定価で買うことなんてほとんどありませんね。 家具はヴィンテージばかり。eBayでとても安く買っています。 たまたま通りかかった家から、ただで譲ってもらったものもあります。 兄弟の家に行ったときにも、途中でいい椅子が目にとまって『車とめて!』と思わず叫んでました。 椅子はとてもきれいな形をしていて、虫に食われてもいなかったので(ここ重要!)、塗装もできそうな感じだったんですね。 骨格さえしっかりしていれば、多少見た目が古びていても、あとでいくらでも蘇りますから」
バーゲンを目ざとく狙って、壁を塗り直した努力は報われたと思いますか?
「もちろんよ。なにしろうちは予約される理由のNo.1が見た目、つまりインテリアですから。 泊まったゲストはその違いに気がついてくれますし、コメントも残してくれます」
改装を考えているけれども掛かる時間や費用が心配。そんなホストに何かアドバイスは?
「まず一番安上がりにイメージチェンジできるのは壁塗り、ですね。 費用対効果は抜群。ほんのわずかの費用で、見違えるほど違いが出ます。 個人的には、白のペイントはあまりおすすめできません。 ロフトみたいな無機的なスペースでもない限り、寒々として味気ないし、すぐに汚れてしまいますからね。 私の場合、一番よく使うのはグレイです。 何にでも合うニュートラルな背景になります。それでいて白よりおしゃれな感じがするし、汚れが目立たないのも魅力。 カラーコーデに慣れていない方には、ライトグレイが入りやすいかな。どんな色にもほぼ間違いなくマッチします」
本業とホスティングの両立はどのように?
「ほとんどの曜日は在宅勤務なので、ホストに割く時間はかなり融通が効きます。 1日中オフィスにいる仕事だったら、こうはいかなったと思いますね。 2つのパソコンを立ち上げて、Airbnbの管理と連絡対応をしながら、雑誌の仕事も両方交互にこなしています。 毎回即答できるわけではないけど、ほとんどの返答は30分以内なので、ゲストは大抵かなり感激して喜んでくれます。 と言ってもパソコン画面をずっと見つめているわけではなくて、Airbnbアプリで通知を受け取っています」
朝コーヒーを飲むときに、その日にやるべきことをおさらいし、1日の残りの計画を立てますね。 もっとも、常に集中して、理路整然と判断しながら、最初に清掃と準備するものが何か考えることもとても大事です。 いつも一番に清掃するのは寝室。 ゲストが到着した時に寝室が準備できていなかったら最悪ですから。 それが終わったら、次はトイレです」
最後にひとこと、何かあればお願いします!
「最初のうちは、1か月の予約がすかすかだと不安になりました。でも、くよくよしてもはじまらない、のんびりいこうって、そのうち思うようになりました。 全力尽くせば、きっと予約も集まる、そう信じて。 だからみなさんも自分の提供するものに自信と信念を持って、がんばりましょうね。 そのうち、掃除と洗濯に明け暮れる日々になりますよ」